肝臓内科

肝臓内科について

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるように、異常が起こっても自覚症状が乏しく見逃してしまいがちなため、定期的に検査を受けて、何かしらの疾患が見つかった際には、専門医による治療を受けることが重要です。
当院では、B型・C型肝炎などのウイルス性肝炎の他、脂肪肝などの生活習慣病がきっかけとなる肝疾患に至るまで、肝機能障害についての包括的な診療が可能です。

そもそも「肝臓」はどんな
働きを
しているのでしょうか?

肝臓がどんな働きをしているかご存じない方も多いと思います。肝臓は皆様が思っている以上に様々な働きをしている臓器です。
肝臓は右上腹部にあり、重さは人間の身体の中で最も重く、1〜1.5kgにもなります。
栄養素を体内で活用できるような状態に変えたり、薬・アルコールの解毒、エネルギーの蓄積、免疫のコントロール、胆汁の分泌など、人間の生命維持において不可欠な役割を担っています。肝臓では数千の酵素を活用して、500を超える化学反応を同時に起こしています。

①物質の代謝

消化管で消化・吸収された食べ物は肝臓に届けられ、運ばれてきた栄養素を代謝(分解、再合成)します。代謝された栄養素は血液に送られたり、肝臓で蓄積されたりします。そのため、脂質異常症や糖尿病などの代謝疾患の治療にあたっては、肝臓の働きを十分に把握することが大切です。
肝臓では血中の過剰な糖をグリコーゲンとして貯蔵し、必要に応じてグルコースとして外に出すことで、一日の血糖値が大きく変動しないようにコントロールしています。また、体内のコレステロールの7割は肝臓で生成され、高コレステロール血症の薬は肝臓に作用するようになっています。他にも、体内で大切な働きをしているタンパク質のアルブミンや、出血を抑える凝固因子も肝臓で生成され、血液に送られています。

②解毒

肝臓には、摂取した薬、アルコール、代謝の際に生まれた有害物質などを毒性が低い物質へと変換し、胆汁や尿の中に放出する解毒作用があります。また、アミノ酸やタンパク質を分解する過程の中で、毒性があるアンモニアが生成されますが、肝臓でアンモニアを尿素に変えて尿中に放出しています。

③胆汁の生成

肝臓では、脂肪の消化・吸収をサポートする胆汁を作っています。肝臓で作られた胆汁は胆管で分泌され、胆のうに蓄積されて濃縮された後、十二指腸で膵液と一緒に脂肪の分解を促進します。

肝臓が悪くなると、
どんな症状が出るの?

急性肝炎(一時的な激しい肝障害)では、尿の色が濃くなる、目や皮膚が黄色くなる(黄疸)、食欲低下、倦怠感、吐き気などの症状が起こりますが、慢性肝炎(長期的な肝障害)ではあまり症状は見られません。肝硬変が進行すると、食欲低下、倦怠感、膨満感、むくみ、目や皮膚が黄色くなる(黄疸)などの症状が起こります。
しかし、こうした症状は病状が進行しないと現れないものです。肝臓は「沈黙の臓器」とも称されるように、非常に忍耐強く粛々と働く臓器です。また、高い再生能力を持ち、全体の70〜80%が無くなっても1年もすれば元のサイズに戻るという強靭さも兼ね備えています。そのため、大きな負担がかかっても自覚症状がほとんど現れず、自覚した時には病状が大きく進行していることも珍しくありません。受診される方の多くは、無症状で偶然、血液検査の際に異常が見つかった方です。肝臓は自覚症状がほとんど現れないため、注意が必要です。

よくある疾患

脂肪肝

肝臓に過剰な中性脂肪が溜まった状態で、自覚症状は少ないです。発症には糖尿病や高血圧などの生活習慣病が大きく関わっており、運動不足、飲酒、メタボリックシンドロームなどが発症原因となります。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)など、一部の脂肪肝では長期的な炎症が起き、肝機能障害に繋がる恐れもあり、放っておくと肝硬変や肝臓がんなどに至るリスクもあります。
また、脂肪肝は急性肝炎や慢性肝炎など別の肝臓病と区別しづらく、重大な疾患を見逃す恐れがあります。特に、非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD)が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に発展すると、肝硬変や肝臓がんなどの発症リスクが上昇します。

慢性肝障害

肝機能障害が半年以上続いている状態です。
「肝機能の数値が高い」「肝臓の数値が高い」ことを背景にご来院される方は少なくありません。
体内で慢性的な肝細胞の炎症が起こっている状態で、発症初期は症状が無い、あるいは疲れやすい、だるい、食欲が湧かないといった軽度の症状が起こるケースが大半です。
慢性肝炎はウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎)によって起こるケースがほとんどで、その他、脂肪肝を放っておくこと、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎などによっても起こります。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、A,B,C,D,E型などの肝炎ウイルスへの感染によって起こります。
急激な炎症が起こり、その後数週間に渡って症状が続くことが大半です。
無症状のこともありますが、風邪と同様の症状や、喫煙者はタバコを美味しく感じなくなるなどの症状が現れます。ウイルスの種類によっては肝機能が低下する肝不全を発症し、命を落とす危険性もあります。
また、ウイルス感染しているが無症状(=キャリア)の方は、周囲の方への感染拡大が起こる恐れがあるため、検査と診察を受けましょう。

肝硬変

肝炎や肝障害が少しずつ進行して肝臓が硬化した状態が肝硬変です。
慢性肝炎が長引き、肝細胞の破壊と修復が頻繁に起こり、肝臓の中に線維質(かさぶたに似た物質)が溜まって壁が生じることで、肝臓が硬化していきます。
肝硬変の発症によって肝機能が低下し、血小板やアルブミン(肝臓で生成されるタンパク質)が著しく少なくなります。
また、肝機能の低下によって合併症が起こるリスクもあるため、要注意です。

肝臓がん

肝細胞がんの代表的な原因として、

  • アルコール性肝炎
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
  • ウイルス性肝炎

などがあり、そのうち約9割がウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎ウイルス)となります。
ウイルス感染が慢性化し、肝細胞の破壊と修復が頻繁に起こると、次第に肝臓が硬化して肝硬変を発症します。その中で、がん細胞を増やす「がん遺伝子」や、通常は細胞ががん化しないようにする「がん抑制遺伝子」に影響が及び、突然変異する遺伝子が増加し、肝細胞がんに繋がります。
また、慢性的かつ過度な飲酒による肝細胞の障害が原因となって、遺伝子異常に繋がります。さらに、お酒を飲まない方でも、中性脂肪が溜まる脂肪肝によって肝臓で炎症が起こり、がんの発症に繋がります。最近では、肝炎ウイルスの治療技術は進化しており、ウイルス性肝炎による肝細胞がんは減ってきていますが、非アルコール性脂肪性肝疾患による肝細胞がんは増え続けています。