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日本における胃がん・大腸がんの罹患数の変遷

~がん大国・日本で今起きていること~

日本は世界でも有数の「がん大国」と言われますが、その中でも特に患者数が多いのが「胃がん」と「大腸がん」です。かつて、日本人の胃腸疾患といえば胃がんが圧倒的多数を占めていましたが、ここ数十年でその勢力図は劇的に変化しています。
厚生労働省や国立がん研究センターの統計を紐解くと、私たちが今、どのような健康リスクに直面しているのかが見えてきます。本コラムでは、胃がんと大腸がんの罹患数(新たにがんと診断される数)の推移を辿り、その背景にある理由と、私たちがこれからの時代を生き抜くための対策について詳しく解説します。

 胃がんの変遷:減少傾向にあるものの、依然として高いリスク

かつて日本人の「国民病」とも呼ばれた胃がんですが、その罹患率(人口あたりの割合)は長期的に見ると減少傾向にあります。

罹患数推移の背景:ピロリ菌除菌の普及

胃がんの罹患数が減少している最大の要因は、 「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」 の感染率の低下です。胃がんの約99%はピロリ菌感染が原因と言われていますが、衛生環境の改善や、健康保険の適用によるピロリ菌除菌治療の普及により、若い世代を中心に感染者が激減しています。
しかし、注意しなければならないのは、「罹患数そのもの」は依然として上位にあるという点です。高齢化社会に伴い、過去に感染した高齢層での発症が続いているため、統計上は今なお毎年10万人以上が新たに胃がんと診断されています。

胃がんのタイプも変化している

従来は胃の出口に近い部分にできるがんが多かったのですが、最近では食生活の変化に伴い、食道と胃の境目(噴門部)付近にできるがんが増加しています。これは逆流性食道炎との関連も指摘されており、ピロリ菌がいないからといって決して油断はできない状況になっています。

大腸がんの変遷:急増するリスクとその理由

    • 胃がんとは対照的に、ここ数十年間で爆発的に増加したのが「大腸がん」です。1970年代から一貫して右肩上がりの推移を見せており、現在では男女合わせた罹患数で全がんの中で第1位(※部位別統計)となることも珍しくありません。

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    • 罹患数急増の背景:食の欧米化

    • 大腸がんの増加には、私たちの「食生活の変化」が密接に関係しています。
      高脂肪・高たんぱく食: 肉類の摂取量が増え、胆汁酸の分泌が過剰になることで、腸内環境が悪化し、発がん物質が生成されやすくなりました。
      食物繊維の不足: 穀物や野菜の摂取量が減り、便の停滞時間が長くなることで、腸壁が有害物質にさらされる時間が増えています。

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    • 座りっぱなしの現代ライフスタイル

    • 食事だけでなく、運動不足も大きな要因です。大腸の運動(ぜん動運動)は身体活動によって活性化されますが、デスクワークの増加や交通手段の発達により、日本人の活動量は低下しました。これにより便秘が増え、結果として大腸がんのリスクを高めていると考えられています。

男女別に見る罹患数の特徴

統計を詳しく見ると、男女で顕著な違いがあることも分かります。

  • 男性の場合
  • 胃がん、大腸がんともに非常に高い水準にあります。特に飲酒や喫煙、過度なストレスがこれらのがんのリスクを押し上げていると推測されます。
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  • 女性の場合
  • 近年、大腸がんが女性のがん死亡原因の第1位となっています。「女性は便秘になりやすい」「更年期以降のホルモンバランスの変化」などが影響している可能性がありますが、何より「大腸内視鏡検査への心理的ハードル」から、発見が遅れてしまうケースが多いことが懸念されています。

統計から読み解く「早期発見」の重要性

  1. 罹患数の推移を見る上で最も重要なのは、 「がんと診断される人が増えても、早期に見つかれば死なない時代になった」 という事実です。

生存率の劇的な向上

早期の胃がん・大腸がん(ステージⅠ)であれば、5年相対生存率は90%を超えます。変遷の中で特筆すべきは、検査技術の向上により「ごく初期のがん」が発見できるようになったことです。 かつては見逃されていたような小さな異変が、現在の高精度な内視鏡検査では鮮明に映し出されます。これにより、罹患数は増えているように見えても、適切な治療によって社会復帰できる人が大幅に増えています。

「罹患数」よりも「進行がん数」を減らすために

私たちが目指すべきは、罹患数そのものを減らす努力(予防)と同時に、進行した状態で発見されるケースを減らすことです。胃がん・大腸がんは、初期段階では自覚症状がほとんどありません。「痛みがないから大丈夫」という考え方が、統計上の死亡数を減らせない最大の壁となっています。

 

これからの予防戦略:あなたができる「守り」の行動

    • 統計の変遷を他人事として終わらせないために、日常生活で取り入れられる3つの柱を紹介します。

      1. 「リスクを知る」

      2. ピロリ菌検査と便潜血検査 まずはご自身がピロリ菌に感染しているかを確認してください。除菌は一生に一度の最大の予防です。また、40歳を過ぎたら自治体の便潜血検査を毎年受けましょう。
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      4. 「定期的な内視鏡検査」

      5. 変遷を止める最強の武器 便潜血検査は万能ではありません。3〜5年に一度の内視鏡検査(胃・大腸)を組み合わせることで、統計上の「見落とし」のリスクを最小限に抑え、がんになる前のポリープを摘出することができます。
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      7. 「生活習慣のリセット」

      8. 加工肉の過剰摂取を控え、アルコールは適量に。そして何より「歩くこと」を意識してください。日々の積み重ねが、将来の統計数値を変えていきます。

まとめ

  1. 日本における胃がん・大腸がんの罹患数の変遷は、社会の成熟と共に歩んできました。ピロリ菌の減少という明るい兆しの一方で、食生活の変化による大腸がんの急増という新たな課題に私たちは直面しています。

    しかし、現代の医療は、かつては不可能だった「早期発見による完治」を可能にしています。統計上の数字はあくまで「平均」であり、あなた自身の未来は、あなたが行う「今日、受診を決める」という小さなアクションで変えることができるのです。

    当クリニックでは、最新の知見に基づき、お一人おひとりのリスクに合わせた丁寧な検査とアドバイスを提供しています。このコラムが、皆様の健康な未来への第一歩となることを願っております。

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