健康診断・人間ドックの重要性
「健康診断」「人間ドック」にどのようなイメージをお持ちでしょうか?会社や自治体から義務付けられているもの、少し面倒なもの、と思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、健診は皆様の健康を守り、充実した人生を送るための「未来への大切な投資」となります。
今回は消化器内科医の立場から、健康診断・人間ドックの重要性についてお話しします。
なぜ健康診断・人間ドックが必要なのか?
健康診断・人間ドックの最大の目的は、ご自身の健康状態を正しく把握することです。私たちは日々の生活の中で、食事・運動・睡眠・喫煙・飲酒など様々な習慣を持っています。これらの習慣は、良くも悪くもご自身の健康状態に影響を与えています。定期的に健診を受けることで、過去の結果と比較し、ご自身の健康状態の変化や日頃の取り組みの効果を多角的に評価することができます。
次に重要な目的は、病気の早期発見と早期治療です。高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病や、がんなど、多くの病気は初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。症状が出始めた時には、すでに病気が進行してしまっている、ということも少なくないです。
健診は、まさにこうした「静かに忍び寄る病気」や、その兆候を発見するための唯一の方法です。
症状がない「健康だと思っている人」ほど、健診が必要です。
また、健診は、健康な状態を維持して長く働き続けるためにも重要です。働くことは常に様々な健康リスクと隣り合わせです。労働安全衛生法では、事業者と労働者双方に健診の実施と受診が義務付けられています。
日本の死亡原因と健康診断の関連性
日本の死亡原因の上位を占めるのは、がん(悪性新生物)と心血管疾患(CVD)です。
2023年のデータでは、年間の死亡者約157万人のうち、がんで死亡した人の割合は約24%、CVDが約14%と、この両者だけで約4割を占めています。
特にがんは、平均寿命の高齢化に伴い、生涯に2人に1人が罹患し、3人に1人が死亡する時代となりました。
がんによる死亡原因の上位を見てみると、
1位:肺がん
2位:大腸がん
3位:胃がん
4位:すい臓がん
5位:肝臓がん
(※男性の場合)
となっており、実は消化器系のがんだけで上位4つを占めています。
いずれも初期に自覚症状がないことが多く、早期発見が重要となります。
また、心血管疾患の原因となる動脈硬化は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙といった生活習慣病が危険因子となります。これらの危険因子を複数持っている方は、CVDを発症するリスクが非常に高くなります。
健康診断を受けてご自身の健康状態を把握し、適切な治療を受けることで、これらの危険因子をコントロールしていくことが重要です。
健診後の「適切な対応」が重要
健診を受けただけで「完結」させてはいけない、という点を強くお伝えしたいです。健診結果に「要再検査」「要精密検査」といった判定が出た場合は、必ず指示に従って医療機関を受診してください。
【消化器内科領域であるよくある健診異常】
≪肝機能の異常:肝機能障害≫
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気が進行するまで症状が現れにくい臓器です。早期の発見と対処が肝疾患(肝炎・脂肪肝・アルコール性肝障害等)の予防に繋がります。
(肝機能の主な指標と基準値)
■AST(GOT):30U/L以下
■ALT(GPT): 30U/L以下
■γ-GTP: 50U/L以下(※男女差があるため、性別により基準範囲は若干異なります)
≪便の異常:便潜血≫
便潜血陽性の場合、痔の可能性もありますが、大腸ポリープや大腸がんといった重篤な疾患の兆候である可能性も否定できません。当院では大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)を行っております。大腸カメラ検査で出血の原因を調べることができます。
≪胃バリウム検査の異常≫
バリウム検査ではポリープの有無や胃粘膜の不整・胃のひだの状態がわかりますが、胃の中の詳しい状態まではわからないため、異常を指摘された場合は、胃カメラ検査を受ける必要があります。当院でも胃カメラ検査を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
≪超音波検査(腹部エコー・腹部超音波)の異常≫
超音波検査で「胆のうポリープ」を指摘された場合、ポリープが「悪性」か「良性」か評価する必要があります。10㎜以上の場合、胆のうがんの疑いもあります。異常を指摘された場合は一度きちんと医療機関を受診しましょう。
まとめ
健康診断や人間ドックは、ご自身の健康と向き合い、より長く、より健康で、より充実した人生を送るための大切な機会です。特に、自覚症状が出にくいがんや生活習慣病を早期に発見するためには欠かせません。そして、健診結果を日々の健康管理に活かし、「要再検査」「要精密検査」の指示が出た場合には、必ず精密検査を受けることが重要です。
ご自身の健康を守るために、定期的に健康診断・人間ドックを受けましょう。内視鏡ドックも取り扱っており、内視鏡専門医である院長が検査に対応いたします。気軽にお問い合わせください。
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