お正月に気を付けたい消化器のこと
2025.12.16
お正月は、家族や親戚が集まり、美味しいご馳走を囲む楽しい期間です。
しかし、この時期は過食・過飲や生活リズムの変化によって、胃腸をはじめとする消化器系に大きな負担がかかりやすい時期でもあります。
「正月太り」だけでなく、「正月病」として胃痛や胸やけ、便秘や下痢などの消化器系の不調を訴える方が増えます。
「飲みすぎ・食べすぎ」の落とし穴
- お正月の食事は、普段よりも高カロリー・高脂質になりがちで、飲酒の機会も増えます。
これが消化器に過度の負担をかけ、様々なトラブルを引き起こします。 -
急性胃炎・逆流性食道炎
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原因
- 暴飲暴食は胃酸の分泌を過剰にし、胃粘膜を傷つけます。さらに、食後すぐに横になったり、お酒を飲みすぎたりすることで、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。
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症状
- 胃の痛み、胃もたれ、胸やけ、呑酸(すっぱいものが上がってくる感覚)。
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対策
・食事量をコントロールし、腹八分目を心がけましょう。
・脂っこいものや刺激物(香辛料、カフェイン)の摂りすぎに注意し、よく噛んでゆっくり食べましょう。
・飲酒は適量を守り、寝る前の3時間以内は飲食を控えましょう。 -
肝臓への過負荷:急性アルコール性肝炎
- 肝臓はアルコールや食べ物に含まれる脂肪の代謝を担う臓器です。お正月期間中に連日大量に飲酒することで、肝臓に急激な負担がかかり、急性アルコール性肝炎を発症するリスクが高まります。
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症状
- 強い全身の倦怠感、黄疸(おうだん)、吐き気や嘔吐。重症化すると命に関わる場合もあります。
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対策
- 休肝日を設けましょう。飲酒する日も、水を飲みながらゆっくりと楽しむことが大切です。特に、元々肝機能に不安がある方は、飲酒を控えめにしてください。
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急性膵炎(すいえん)
- お正月で最も重篤な消化器トラブルの一つが急性膵炎です。膵臓は、食物の消化を助ける消化酵素と、血糖値をコントロールするインスリンを分泌しています。
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原因
- アルコールの過剰摂取と、高脂肪な食事が主な引き金となります。これらにより膵液が膵臓内で活性化してしまい、膵臓自身を消化し、激しい炎症を起こします。
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症状
- 上腹部から背中にかけての激しい痛み(七転八倒するような痛み)、吐き気、発熱。
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対策
- 飲酒は絶対に控えめにし、脂質の摂りすぎに注意しましょう。激しい腹痛を感じた場合は、我慢せずにすぐに医療機関を受診してください。
食事内容の変化で起こる「お通じ」のトラブル
- お正月は、旅行や帰省による環境の変化、食物繊維の少ない食事、運動不足などから、便通のトラブルも増えます。
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滞りがちな便秘
- もちや肉料理、おせちなど、お正月の料理は糖質やタンパク質、脂質が多くなりがちで、普段食べている野菜や海藻類、豆類などの食物繊維の摂取量が減りやすい傾向にあります。
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対策
- ・意識して水溶性・不溶性の食物繊維を多く摂るようにしましょう。特に大根やごぼう、きのこ類などは積極的に食事に取り入れてください。
・水分摂取を心がけましょう。アルコールではなく、温かいお茶や水をこまめに飲むことが重要です。
・寒い時期ですが、散歩など軽い運動で腸の動きを促しましょう。 -
繰り返す下痢
- 正月料理の作り置きや持ち運びによって、細菌性の食中毒が起こるリスクもあります。また、食べすぎや飲みすぎ自体が、消化不良による下痢を引き起こす原因にもなります。
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対策
- ・作り置きのおせち料理は冷蔵保存を徹底し、加熱が必要なものはしっかり火を通しましょう。
・食べすぎによる下痢の場合は、おかゆやうどんなど、消化の良い食事で胃腸を休ませることが最優先です。
生活リズムの乱れが引き起こす自律神経の不調
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お正月は夜更かしや寝坊など、普段の生活リズムが乱れがちです。その結果、このリズムの乱れは、自律神経のバランスを崩し、胃腸の働きに悪影響を及ぼします。
自律神経は、ストレスから体を守る役割と同時に、胃腸の動きや胃酸の分泌をコントロールしています。 -
影響 -
胃腸の動きが鈍くなり、胃もたれや食欲不振につながるほか、過敏性腸症候群の症状が悪化し、腹痛を伴う下痢や便秘を引き起こすことがあります。
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対策
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・できる限り規則正しい時間に起床・就寝することを心がけましょう。
・食事もできるだけ決まった時間に摂り、ダラダラ食いを避けましょう。
・軽いストレッチや散歩など、リラックスできる時間を意識的に作り、自律神経を整えましょう。
まとめ
お正月は、胃腸にとって一年で最も酷使される時期かもしれません。
・暴飲暴食を避け、腹八分目を守ることが、すべての消化器トラブルを予防する基本です。
・もし食べすぎた日があれば、翌日はおかゆやスープなど、消化に良い回復食を取り入れ、胃腸を労わる時間を作りましょう。
もし、激しい腹痛や吐き気、血便など、普段と違う強い症状が出た場合は、「正月休みだから」と我慢せず、速やかに医療機関を受診してください。


