「沈黙の臓器」肝臓
肝臓がんは、日本国内でも依然として発生数の多い、深刻な疾患です。その特徴は、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の性質上、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、気づいた時には進行しているケースが多いことです。
しかし、肝臓がんには重要な特徴があります。それは、「ほとんどが慢性肝炎や肝硬変といった、既存の肝臓病から発生する」という点です。
つまり、原因疾患を持っている方にとっては、定期的な精密検査こそが、病気の発見・治癒の鍵を握ります。
肝臓がんのハイリスクグループ
以下のような方は一度当院までご相談下さい。
◎B型・C型慢性肝炎の方(治癒後も肝硬変があればリスクは残ります)
◎肝硬変と診断されている方(原因を問いません)
◎代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)と診断されている方
当院は、これらのハイリスクの方々に対し、3〜6ヶ月に一度の腹部超音波検査(エコー)や腫瘍マーカーなどの精密検査を徹底しています。
肝臓がんとは
肝臓に発生するがんには、主に二つの種類があります。
原発性肝臓がん: 
肝臓そのものから発生するがんで、ほとんどがこちらに該当します。
- 転移性肝臓がん:
胃や大腸など、他の臓器から肝臓に転移したがんです。
原発性肝臓がんはさらに、肝臓の細胞から発生する肝細胞がんと、胆管の細胞から発生する肝内胆管細胞がんに分けられます。日本の肝臓がんの約90%は肝細胞がんであり、慢性肝炎や肝硬変といった肝臓病を背景に発生するのが特徴です。
検査肝臓がんの主な原因
肝臓がんは、健康な肝臓から突然発生することは稀です。
慢性的な肝臓の炎症と線維化が続くことにより、細胞の遺伝子異常が蓄積し、がんが発生します。主な原因は以下の3つです。
ウイルス性肝炎(C型・B型)
かつては日本における肝臓がんの原因の約8割を占めていました。最新の抗ウイルス薬でC型肝炎は治癒可能となり、B型肝炎もコントロール可能となりましたが、ウイルス排除後も肝硬変に至っている方は依然として高い発がんリスクがあります。
代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)
元々は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)と呼ばれていましたが、名称が変更されました。アルコールをほとんど飲まない方の脂肪肝炎で、近年急速に増加している原因です。MASHから肝硬変へと進行すると、肝臓がんのリスクが跳ね上がります。これは、肥満、糖尿病、脂質異常症といったメタボリックシンドロームが強く関わっています。
アルコール性肝障害
長期間にわたる過度の飲酒が原因で、肝硬変へと進行し、そこからがんが発生します。
原因が何であれ、肝硬変まで進行した肝臓は、がんが発生しやすい土壌となっており、年間3%~8%という高い確率で肝細胞がんが発生すると言われています。そのため、肝硬変と診断された方は、必ず3~4ヶ月ごとの定期的な監視検査が必要となります。
肝臓がんの症状と早期発見のための検査
自覚症状はほとんどない
肝臓がんの最大の難しさは、初期には全く症状がないことです。肝臓の予備能力が高いため、がんが大きくなるまで、あるいは肝硬変が進行するまで、体調の変化を感じることはほとんどありません。
がんが進行し、肝機能が低下したり、腫瘍が大きくなったりすると、以下のような症状が現れます。
- ◎腹部のしこり、張り、圧迫感
- ◎倦怠感、全身の疲労感
- ◎黄疸(皮膚や目の色が黄色くなる)
- ◎腹水によるお腹の膨らみ、むくみ
早期発見のための検査
自覚症状がないからこそ、ハイリスク者に対する定期的な検査が非常に重要です。
当院では以下の検査を組み合わせ、肝臓がんの超早期発見に努めています。
血液検査(腫瘍マーカー)
- 肝臓がんの発生に伴って上昇する特殊な物質(AFP、PIVKA-IIなど)を測定します。画像検査と組み合わせることで、早期発見の精度を高めます。
超音波(エコー)検査
体への負担がなく、小さな肝臓がんを見つけるのに最も有効な検査です。当院では、経験豊富な専門医が3~6ヶ月ごとに肝臓全体を細かくチェックし、異常を早期に発見します。
肝臓がんの治療法と基幹病院との連携

肝臓がんの治療法は多岐にわたり、「がんの大きさや数」「がんができた場所」
「患者様の肝機能の状態(肝硬変の進み具合)」などを総合的に判断して決定されます。
主な治療法の選択肢
当院でがんが発見された場合、患者様の病状に応じて、以下の治療が可能な高次医療機関(基幹病院)へ速やかにご紹介・連携します。
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治療法 |
概要と適応 |
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外科的切除 |
がんを切除する根本治療。肝機能が良い方、がんが単発で大きい場合に適応されます。 |
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ラジオ波焼灼療法 (RFA) |
特殊な針を刺し、熱でがん細胞を焼き殺す治療。径3cm以下、3個以内のがんに非常に有効で、体への負担が少ない治療です。 |
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肝動脈化学塞栓療法 (TACE) |
がんを栄養する血管を塞ぎ、抗がん剤を流し込む治療。多発性のものや、切除・RFAが難しい場合に選択されます。 |
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薬物療法 |
分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、最新の全身治療薬。進行がんや、他の治療が困難な場合に、生存期間の延長を目指します。 |
当院の連携体制
当院は、がん治療の実施は行いませんが、診断と治療後のフォローアップを行っております。
診断・紹介: エコー検査などでがんを疑った場合、迅速に提携の総合病院へご紹介し、精密検査(CT、MRIなど)と治療に移行していただきます。
治療後の監視: 基幹病院での治療が終了した後も、当院で定期的なエコー、採血を行い、再発の監視と残った肝臓の肝機能管理を継続して行います。
まとめ
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肝臓がんの予防、それは原因となる慢性肝疾患を徹底的に治療し、管理することに尽きます。
- C型肝炎は完治を目指す: 治癒率の高いDAAs治療を速やかに受けましょう。
- B型肝炎はコントロール: 核酸アナログ製剤でウイルスの増殖を抑え込みましょう。
- 脂肪肝・MASHは減量を: 生活習慣を見直し、肝臓の炎症を鎮めましょう。
継続的な管理と、早期発見のための3~6ヶ月ごとの定期検査を必ず受けてください。
よくある質問
肝臓がんの生存率は高いですか?
早期に発見できた場合(小さな単発のがんなど)は、RFAや切除によって非常に高い治療成績が期待できます。しかし、進行がんで発見された場合は厳しい状況になります。早期発見にかかっているというのが現実です。
治癒したC型肝炎でも定期検査は必要ですか?
必要です。 ウイルスが排除されても、肝炎の期間が長かったために肝臓の線維化(硬さ)が残っている場合、がんのリスクはゼロになりません。線維化の程度に応じて、定期的なエコーと採血による監視が必要です。
肝臓がんは予防できますか?
原因疾患(ウイルス性肝炎、MASHなど)の適切な治療と、肝硬変への進行を食い止めることで、発がんリスクを大幅に下げることができます。特にMASHの方は生活習慣の改善が予防に直結します。


